2025/05/28 09:12


前回は、「深煎りのコーヒーはカフェインが多いのか?」ということについて書きました。
今回は、「焙煎によってコーヒーらしい風味ができるのは?」という点です。



カフェインも、コーヒーの苦味成分のひとつとされています。
その閾値(いきち)は、100mg/L(0.01%)前後。
実際のコーヒーには、その約10倍の濃度が含まれているそうです。



こうしたことから、かつては「コーヒーの苦味=カフェイン」と信じられていました。
ですが、焙煎が深煎りになってもカフェインの量がほとんど変わらないことが分かり、

苦味の原因はどうやら別の物質にあるようだと考えられるようになりました。



それでは、「焙煎が深煎りになるにつれ、コーヒーらしい風味が生まれるのはなぜか?」



この点について、少しご紹介してみます。

2006年、ミュンヘン工科大学のトマス・ホフマン教授らは、

生豆に含まれるいくつかの成分をそれぞれ単独で加熱し、

「コーヒーらしい苦味」が生まれるかどうかを検証する実験を行いました。



その結果、もっともコーヒーの苦味に近いとされたのが、「クロロゲン酸」という成分の加熱物でした。

クロロゲン酸は、カフェ酸(コーヒー酸)とキナ酸が結合してできた、ポリフェノールの一種です。
これを加熱することで、「クロロゲン酸ラクトン類(CQL)」と「ビニルカテコール・オリゴマー(VCO)」という、

2種類の苦味成分のグループが生まれることがわかりました。
どちらも、コーヒーの苦味に大きく関与していると報告されています。



これらの苦味の閾値は、10~20mg/Lとされており、

カフェインのおよそ10倍の苦味に相当します。
実際のコーヒーの中には、普通のものもカフェインレスも含めて、

これらの成分が閾値の40倍近い濃度で溶け込んでいるそうです。



CQLもVCOも、生豆には存在せず、焙煎によって新たに生成される物質です。
CQLは焙煎が進む中で先に増え、中煎りあたりをピークに減少。
それに代わってVCOが増えていくという変化が起きます。



ただし、このふたつの成分だけでは、コーヒーらしい「味わい」までは生まれません。
あの豊かで複雑なコーヒーの風味は、生豆に含まれるさまざまな成分が、

焙煎によって化学変化することで形作られているのです。



「焙煎によってコーヒーらしい風味ができるのは?」
今回はこのテーマを、ここまでにしたいと思います。



「コーヒーの香味や酸味はどこからくるのか」なども、

またお時間があれば書いてみたいと思います。



※閾値(いきち)… 感覚や反応、興奮などを引き起こすのに必要な、最小の刺激や物理量のこと。

引用:コーヒーの科学「おいしさはどこで生まれるのか」旦部幸博